ホテル側がハンセン病療養所訪れ謝罪、宿泊拒否問題。JTBでは販売を停止。

2003年、熊本県内の宿泊施設で、県が実施する「ふるさと訪問事業」に参加するハンセン病療養所の入所者の宿泊を拒否する問題が発生しました。

熊本県は、ハンセン病について正しい理解を求めながら宿泊施設側に説明と抗議を行いましたが、施設側は一度宿泊を拒否。その後施設側による謝罪が行われたものの、宿泊拒否に至った経緯や責任の所在をめぐって双方の認識には隔たりが残り、問題は全国的な人権問題として大きく取り上げられることとなりました。

この問題を受け、JTBは2003年11月20日付で、全国のJTBグループ支店・販売店・提携販売店において当該宿泊施設の販売を停止しました。当時、JTBはその理由を、同社の基本方針に著しく反するためとしていました。

その後、施設を経営する会社の代表者は記者会見を開き、ハンセン病についての認識不足は認めながらも、宿泊拒否そのものについては当時「ホテル業として当然の判断」とする趣旨の説明を行い、熊本県側の対応にも責任があるとの認識を示しました。施設側による謝罪が行われる一方で、人権への認識や責任の所在をめぐる問題は簡単には収束しませんでした。

また、当該宿泊施設が加盟していた黒川温泉観光旅館協同組合も2003年12月、臨時総会を開き、「組合の信用を傷つけた」として施設を除名処分としました。これにより、組合の観光案内から当該施設が外され、複数の温泉を利用できる組合発行の「温泉手形」の対象からも除外されました。

さらに同年12月、運営会社は自社ホームページに「正式見解」を掲載し、宿泊拒否について従来の判断を変更しない立場を改めて示しました。宿泊予定者がハンセン病療養所の入所者であることを予約時に知らされなかったことが問題の発端であるとして熊本県側の対応を批判し、入所者への謝罪についても、宿泊を拒否したこと自体への謝罪ではないとの説明を行いました。これに対して熊本県や入所者側は強く反発し、施設側との認識の隔たりはさらに鮮明になりました。

熊本県はその後、この宿泊拒否を重大な人権侵害であり不当な宿泊拒否にあたるとして、旅館業法に基づき3日間の営業停止処分を行いました。運営会社はその後ホテルの廃業を決定し、施設は営業を終了しました。廃業に伴って地元従業員が解雇され、その後は雇用をめぐる問題にも発展しています。

この一連の出来事は、ハンセン病に対する偏見や差別がなお社会に残っていたことを改めて浮き彫りにするとともに、宿泊事業者や旅行会社にも人権への正しい理解と対応が求められることを示す出来事となりました。